私小説

こんにちは、マスターです。
10月4日が中秋の名月でしたがお客さんのところから月は見られましたか?

俺は満月の日は普段から調べていて、その日はお店をお休みするか途中で抜けだして行く場所がある。佃の中の島公園。え、1人かって?
もちろん、1人じゃねーよ。




お客さんの中に、若めの髪を伸ばした男性がいて彼が、先日昔書いたという小説を恥ずかしそうに持ってきた。

読んでみろという。
読んでみた。

せっかくだからブログで紹介させろと俺が言うと、男性は良いですよと
恥は捨ててしまいたいと話した。

何があったのだろうか。

とりあえず、ここで披露しようと思う。

コンタクトを取りたい方は、是非お店に来てお声かけください。その時はご紹介します

マスター


*  *  *



かつて歌手のジェニファーロペスはこう言った。

人がセクシーさを感じるのは
ルックスじゃない 
あり方なのよ 
自分が自分であることを
自然に受け入れている女性が
結果的に誰にとってもセクシーな存在に
なれる秘訣じゃない? 

その日俺は友達から電話を受け、「飯を食いに行かない?」と誘われた。 
快くOKし、新宿で会うことになった。 
友達と19時過ぎに合流し、その日は二人とも金がないということで、安くで食べれる青い看板が目印の定食屋に入った。そこは大衆食堂的なお店で、その日もご多分に漏れず腹を空かせた若者がごった返していて、定食を食べながらおしゃべりに興じていた。 
俺と友達が座った席の隣にも、案の定二人の若者がいて、空になった器を前におしゃべりに華を咲かせていた。 
その二人はどちらも女の子で、一人は髪の毛をイエローブラウンに染めたキャバクラ勤め風の女の子。もう一人は黒髪のボブで少し内気そうな女の子だった。 
なぜこの二人が仲良く付き合っているのか、すこし気になった。 

A子「私そろそろ痩せないとやばいってー」 
B子「そんなことないってー。A子痩せてるしー、あたしのほうがやばいってー!」 
やばいやばいって。俺の店の名前が”YABAR”だったからだろうか、二人の話がやたらと俺の耳に入ってきた。
A子「それにあたし歯並びも悪いし、ブサイクでしょ?」 
B子「そんなことないってー」 
なるほど。A子さんはB子さんの「そんなことないってー」をカンフル剤代わりにして自尊心を保っているのかな、なんて考えていた。すると、
A子「だって、あたしこんなだからさー。思わずこの前お母さんに聞いたのさ、『なんでこんな風に産んだのさー』とか『歯並び悪いし、こんなんでうまくいくわけないじゃーん』とかって」 
B子「そっかー」 
この話を聞いた時、俺は珍しくカチンときた。なんかA子のその発言は親への感謝の念が感じられない言い方だったから。 
俺はそのあとふた呼吸おいて、気分が落ち着いたのを確認し、友達に向かって大きめな、ちょうど隣に聞こえるくらいの声で語りだした。
 
俺「俺の弟、覚えてる?」 
友達「うん、どったの?」 
俺「俺この前弟にさ、すげえな、こいつって思うことがあったんだよねー」 
友達「?」 
俺「俺の弟って小さいころすげーデブでさ。小学生で80キロありますって人だったんだよねー。でね、弟って昔お袋に、なんでこんな姿になるまで食わせるんだって怒鳴ったことがあったのよ。」 
友達「うんうん」 
俺「それがね、ある日『こんなうまい飯を作ったら食っちゃうだろうがよ!』に変わったの。」 
友達「へー・・・それってなんかいい話だね。」 
俺「でね、この話、続きがあって。彼、いま一人暮らしなんだけど、この前帰ったらお袋に真剣な顔で”あの時はごめん”とかって言ってたんだよ。なんか、俺すげーなって思った。不覚にもカッコイイなこいつって思ったんだよねー。」 
友達「うん、そうだね」 
話の途中でチラッと横を見えると、無言の、少し伏し目がちなA子がいた。 
・・・ 

人がセクシーさを感じるのは
ルックスじゃない 
あり方なのよ 
自分が自分であることを
自然に受け入れている女性が
結果的に誰にとってもセクシーな存在に
なれる秘訣じゃない? 

終わり 


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今回も読んでいただきありがとうございます

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